子供の遊戯
先日手がけた作品でハングマン/hangmanという子供のゲームが出てきた。日本では絞首刑ゲームと訳されることが多い。といっても血生臭いものではなく、単語当てのゲームだ。出題者がある単語を頭に思い浮かべ、相手がその単語を当てるというものだ。出題者はまず線画で絞首台を描き、思い浮かべた単語の文字数だけの下線を引く。例えばhangmanだったら7本の下線を引くわけだ。回答者は1回につき1つのアルファベットを言う。言われたアルファベットが単語に含まれていたら、その箇所に書く。例えば回答者がNと言ったら、出題者は3つめと最後の下線にNを加える。言われたアルファベットが含まれていなければ、出題者は絞首台の下に、丸を書く。線画で書いた人の頭ということだ。その後も回答者が外れたら、続けて胴体、手、足などを線画で描き加えていく。単語を当てるのが先か、絞首刑になった人間の線画を完成するのが先かを競うゲームというわけ。
僕はこのゲームを中学生の時に知っていた。クラスにアメリカからの帰国子女がいて、彼から教えてもらったのだ。回答者側が不利に思えるが、単語にはかなりの確率で母音が含まれている。母音から攻めて、残った下線部を推理すると案外当たることもある。しかし一度、その彼が出した問題は全然分からなかった。答えはrhythm。文字数は格別多くないし、普通に使う単語だが、母音が入っていないのだ。さすが帰国子女!
彼からは別のゲームも教わった。アウトというバスケットボールのゲームだ。これも地面に下線を4本引き、最初のプレーヤーがゴールにボールをシュートする。その後で残りのプレーヤーもボールをシュートするのだが、最初のプレーヤーと同じフォームでシュートしなければいけない。例えば走りながら左手でランニングシュート(レイアップと言う)したら、残りのプレーヤーも同じやり方でシュートを決めなければいけない。成功すれば、最初のプレーヤーは新たなフォームでシュートして、残りのプレーヤーに真似させる。失敗したら、最初の下線にアルファベットのOの文字を書く。これを続けてO、U、T、. (=ピリオド)の4文字が完成したらOUT、即ちアウトで最初のプレーヤーの勝ちというゲームだ。
学校には必ずバスケットのゴールポストがあるとはいえ、体育の授業以外でバスケットなどやったことがない。このように遊びでバスケットをするということは、アメリカでは人気のスポーツなのかと思った記憶がある。当時の中学生、というか多くの日本人はNBAという言葉など知らない時代の話だ。
子供のゲームといえば、別の作品でI spyというのもあった。ドライブ中にいがみ合ってばかりいる2人に向かって「普通のアメリカ人みたいにI spyでもしてなごやかにドライブできないのか?」と怒るのだ。
これは親が子供の観察力とアルファベットへの親しみを養うためにやるゲーム。例えば親がI spy with my little eye, something red/このお目々で赤い物を監視しています(スパイしています)と言うと、子供が部屋の中で赤い物を探して「リンゴ!」などと答えるのだ。something以下をsomething beginning with C/Cで始まる物などと言い換えれば、子供はCar/車(ミニカー)などと答えればいい。本来は子供の遊びだが、長時間のドライブの暇つぶしに大人もやるポピュラーな遊びらしい。日本だと大人が退屈しのぎに車内でしりとりをやるような感覚ではないか。
ちなみにお子さんをお持ちの方ならご存じだろうが、人気の絵本で「ミッケ!」というのがある。見開きページ一面に隠れている物を探す絵本だが、この原題がI spyという。上述のゲームを踏まえているわけですね。