伊藤 みなみ
- 東京校
英日字幕翻訳コース
ごあいさつ
映像翻訳は、さまざまな力が求められる反面、どんなご経験でも役に立つお仕事です。新しいことにチャレンジし、多くを吸収して、皆さんのご経験を活かしてください。一緒にプロの翻訳を目指しましょう。
実績
6年間、日本語版制作会社に勤務し、字幕・吹替制作部チーフを務める。その後、独立し、映像翻訳者として活動。IT翻訳会社でのプロジェクトマネージメント業務を経て、現在はフリーランスとして主に字幕翻訳を手がける。
作品に入り込んでしまって翻訳しながら号泣したことも。 これほど情熱を持って取り組める仕事はありません。 離れたくても離れられません笑
マンツーマン講座(英日)を担当していただいている伊藤みなみ先生にインタビュー形式で字幕翻訳にかける情熱や苦労話をお伺いしました。「これほど熱く語れる仕事はない」と話される通り、1時間にわたって熱く語っていただきました。
- ワイズ
- こんにちは。今日はよろしくお願いします。
- 伊藤
- よろしくお願いします。
「賽は投げられた」が「匙は投げられた」と出てきたときは 呆れるを通り越して笑ってしまいました。 「投げたいのはこっちだよ」と笑。
- ワイズ
- お仕事の経歴を拝見したんですが、以前は制作会社に勤められてたんですね。制作会社でのお仕事について教えていただけますか?
- 伊藤
- はい、大学を卒業して初めての就職で制作会社に入り、。上がってきた翻訳の表現を変えたりなど「演出」する仕事に就きました。
- ワイズ
- じゃあいろんな翻訳者さんの字幕を見られてたんですね。
- 伊藤
- そうですね、おかげさまで。ただ残念ながら、そのまま使えるというレベルの翻訳はほとんどなかったのが実情でした。それを商品になるレベルまで仕上げていくという経験は字幕翻訳者として活動している今も役に立っていると感じています。
- ワイズ
- なるほど。じゃあ翻訳の後工程というか、クライアントとしての制作会社が求めていることもイメージできる、というのも伊藤先生の強みですね。「こんな翻訳者はイヤだ」的なこともあったり笑?
- 伊藤
- ありました笑。納期を過ぎているのに連絡がないとか、そもそも翻訳を見てもなにを言っているのかわからないとか・・・。「賽は投げられた」が「匙は投げられた」に訳されて出てきたときは思わず笑っちゃいましたが・・・。考えてみるとそうした「こんな翻訳者はイヤだ」がわかっているのも反面教師とできているので良かったと思います。
- ワイズ
- 匙、投げられちゃいましたか笑。こっちが投げたいよと笑。でも、なぜ制作会社のお仕事に就いたんですか?
- 伊藤
- 制作会社に勤めるというのは将来的に字幕翻訳者になるのにおススメというか、キャリアパスとして定番ともいえるルートだと教えてもらったからです。なので、スクールを終えてそのまま制作会社に入った、という流れです。
もともと「英語が話せない」というコンプレックスがあったんですが、、、 親に反対されても字幕翻訳者になる道を選びました。
- ワイズ
- なるほど。では字幕翻訳者になる、というのがありきの選択だったわけですね。そもそも字幕翻訳者になろうと思われたのはいつ頃ですか?
- 伊藤
- 就職活動が始まる大学3年、4年の頃だったと思います。当時は企業に就職する気はまったくなかったので、どんな選択肢があるかなと探してみた時期に「翻訳者」というお仕事に出会いました。大学に入ってから英語を話せないことにコンプレックスを感じて駅前留学などしていましたので。
- ワイズ
- 英語が話せなかったんですか?
- 伊藤
- はい、相手の言っていることはなんとなくわかるんですが話せない、という典型的な・・・。アルバイト先も外国のお客様が多いのかなと赤坂見附のレストランを選んでみたり笑。
- ワイズ
- そこから今は翻訳者として活躍されているってすごいですね。今はあまり外国語に自信のない方でも努力次第で字幕翻訳者にはなれる、という希望に繋がりそうです。では翻訳者というお仕事を知ってからはもうそれ一筋で?
- 伊藤
- いえ、実際はスクールに通うのと海外に留学するのとを迷っていました。ただ、目的もはっきりしない状態で留学を選んでも安易な選択であまり良い結果に繋がらないのかな、とも思ってスクールを選びました。親には反対されましたけど。
- ワイズ
- 反対。それはまたどうして?
- 伊藤
- やっぱり親としては卒業したら就職、というのが当たり前で、スクールに通って翻訳を勉強するって「就職もせずに何をしてるんだ」と思ってたようです。
- ワイズ
- それでも!と。
- 伊藤
- ですね。
字幕翻訳者として復帰して仕事が貰えた時は早く帰って翻訳がしたくて。 「やっぱり私にはこの仕事だ!」と実感しました。
- ワイズ
- そこから制作会社に入って、一度フリーランスとして独立されてますよね? その後にまたローカライズ会社に入られたようですが。
- 伊藤
- はい、制作会社での役割がプレーヤーからマネージャー的なものになってきてしまったのもあってフリーランスになりました。いろいろ勉強したりワイズさんからもお仕事をいただけたりはしていたんですが、時間の使い方や管理の仕方がわからずいっぱいいっぱいになってしまって。睡眠時間が取れずに続けられない状態に・・・。
- ワイズ
- フリーランスの時間管理は自分で気をつけないとそんなことにもなりがちですよね。そこでローカライズの会社に?
- 伊藤
- はい、「人間らしい生活」がしたくて笑。結局4年ほどでまたフリーランスに戻るんですが、それはそれでよい時期だったと思っています。いかに自分が映像翻訳が好きかと言うことも実感できました。離れてわかる、というか。
- ワイズ
- 離れてみたら実は離れられないということに気付いたんですね。2回目のフリーランス生活は順調に?
- 伊藤
- 順調に、かはわかりませんが、復帰してワイズさんにご挨拶に伺わせてもらった際に「さっそくなんですけど」とお仕事をご依頼いただいて。もうものすごく嬉しくて、早く帰って翻訳がしたい!ってソワソワしちゃって。「やっぱり私はこの仕事だなぁ!」と実感しました。
- ワイズ
- 1回目の独立の時に課題だった時間管理は?
- 伊藤
- いまは大丈夫になりました。自分の翻訳ペースがわかってきて意識しているのが大きいと思います。1回目の独立でたいへんな思いをしたことも結果的には良かったと思っています。
教える時に意識しているのは 「最後まで自分で考えてもらう、直してもらう」こと。 「ひとつずつ積み重ね」ができるような返し方をすること。 これがマンツーマン講座のメリットです。
- ワイズ
- 講師として教える時に意識していることを教えていただけますか? また、グループ講座とマンツーマン講座の違いがあれば教えてください。
- 伊藤
- 意識しているのは「最後まで自分で考えてもらう、直してもらう」ということでしょうか。答えを言ってしまうのは教える側も簡単だし楽なのですが、「直す作業やプロセス」にこそ成長のタネがあると思っています。最後まで自分で訳文を見直して質を上げていくことがいちばん成長に繋がるので常にそのようにしてあげたいのですが、グループだと限界があるのも事実で。
- ワイズ
- 確かにそうですね。グループ講座だと全体のペースを揃える必要がありますから、やっぱりある程度で切り上げて次に進まなくてはならないことも出てくるでしょうし。
- 伊藤
- そうなんです。マンツーマンであればちゃんとその「直す時間」を取ってあげられるので。「今日の訳について次回までにこんなことをヒントに見直してみてください」と宿題を出したり。そうしてくると少しずつ翻訳のクセや弱点もわかってくるのでどんどんフィードバックも効果が出てくると感じます。これはグループよりマンツーマンの方がやはりやりやすいですね。
- ワイズ
- 制作会社に勤めていた目線でのフィードバックが厳しそうですね笑。
- 伊藤
- 笑。まあ確かに指摘したいことがたくさん出ることもありますが、それらをいっぺんにお伝えしてしまうと混乱しかねないので、「ひとつずつクリア」できるようにフィードバックや課題も「ひとつずつ積み重ね」ができるような返し方を心がけています。
作品に入り込んで号泣しながら翻訳したことも。 「このセリフだけは感動させたい!」と泣きながら訳しました。
- ワイズ
- ちょっと話は変わりますが、好きな映画を教えていただけますか?
- 伊藤
- えーっと、、、すっごくベタなんですが、『タイタニック』で号泣しちゃいます。タイタニックに限らず、なんだか作り手の意図の通りに泣いちゃうんですよね笑。他には、もう10年以上追いかけているドラマもあります。クリミナルマインドっていう犯罪心理学のドラマです。DVDもずっと買い続けていて。
- ワイズ
- 10年!それはスゴイ。じゃあそうしたドラマの翻訳がしたい?
- 伊藤
- そうですね。シリーズものを最初から最後まで通しでやってみたいとは思っています。
- ワイズ
- 字幕翻訳者としてこれまでで印象的なお仕事は?
- 伊藤
- いろいろ考えたんですが、最初に思い浮かんだのがワイズさんからいただいたお仕事で、韓国映画を英語から翻訳するというお仕事でしょうか・・・ 号泣しながら翻訳することになっちゃって笑。
- ワイズ
- 号泣しながら翻訳!入り込んじゃってますね笑。普段からですか?
- 伊藤
- そうですね、普段から入り込むことが多いです。客観的に見る目線も必要なのでバランスはとるようにしていますが、その時はもう完全に入り込んじゃって「このセリフだけは感動させたい!」という気持ちでとにかく泣きながら訳を付けていました。
- ワイズ
- うーん、それは本当に字幕翻訳者としてのやりがいですよね。
- 伊藤
- はい、字幕翻訳者というのは本当にやりがいのある仕事だと思います。私自身、離れようと思ってももう離れられませんし、他の仕事だとこんなにアツく語れないと思いますが、この仕事ならいくらでも語れます。もちろん大変なこともありますが、それ以上に楽しさ、喜びを見いだせるお仕事だと思っています。
大変なことももちろんありますが、 「それでもやりたい、それでもおススメの仕事」です。
- ワイズ
- 例えばどんな方におススメでしょう?
- 伊藤
- 実際に多いのが子育てが少し落ち着かれたお母さんです。ようやく自分の時間が持てるようになって「新しいことを始めたい」とか「在宅で家計にプラスの収入があると嬉しい」という方にはぴったりの選択肢だと思います。映画が好きならなおさらです。現実的な話になっちゃいますが・・・
- ワイズ
- いえいえ、字幕翻訳者というのはれっきとしたお仕事ですから夢物語や理想の話じゃなくて現実的な話も大歓迎です。大変なこともある、というのも本当のことだと思いますし。「それでも、やりたい」お仕事なんですものね?
- 伊藤
- そうです。「それでもやりたい、それでもおススメのお仕事」です。
- ワイズ
- その言葉が聞けてお仕事を依頼している私たちとしてもとても安心しました笑。これからも引き続きよろしくお願いします。今日はありがとうございました。
- 伊藤
- ありがとうございました。
お話を伺っている間中、とても楽しそうにお話をしてくれた伊藤先生です。聞いているこちらも「伊藤先生、本当に字幕翻訳が好きなんだなぁ」と何度も実感。いちばん印象的だったのは号泣しながら翻訳していたというお話。その最中に感動して泣けるってお仕事、世の中にどれくらいあるでしょうか。そうしたお仕事の一端を担っている自分たちのことも誇らしく感じることができました。「字幕翻訳者という素晴らしい仕事」を広めるご指導、引き続きよろしくお願いします。