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翻訳の現場から


2025.05.20

風間先生の翻訳コラム

コラム第125回:渋谷じゃないよ、間違えないでね

渋谷じゃないよ、間違えないでね

 前回紹介した「シンシン/SING SING」でマイク・マイクという男が自分の名前の話をする場面がある。そこで「ロールコールってあるだろ。“俺の名は…”ってやつ」と言うのだが、初見では何のことか分からない。よく聞くと舌を鳴らしてリズムを取っている感じなのだが…
 試しに“roll call”“my name is”で検索するとすぐにヒットした。一番上の動画タイトルはShibuya Roll Callとある。再生してみると、どうやら集まった人間がリズムに乗って次々に自己紹介をする遊びらしきもののようだ。このShibuyaってもしや渋谷のことか?
 さらに調べてみると正解が分かった。正しくはShabooya Roll Callという。シブヤではなくシャブヤである。roll call/ロールコールは本来は点呼という意味だが、この場合は自己紹介の方が近いだろう。まず周囲の人間がShabooya, ya, ya, Shabooya Roll Callと2回繰り返した後、自己紹介する人間がMy name is 〇〇と言って、これに続けてリズムに乗せて自分のことを短く3フレーズ言う。名前を含めると4フレーズだ。周囲の人間はフレーズごとにYeah!と合いの手を入れ、4レーズ目の後はRoll callと言って、再びShabooya~を繰り返し、次の人間に替わるというもの。フレーズの内容は単純でいいが、できればライムし、最後にオチをつけるのが理想のようだ。例えば“シブヤ”の動画では女性が次のように言う。
My name is Pam/I like to paint/You think you’d better/Oh no you ain’t
私はパム/絵を描くのが好き/あなたの方がうまいって?/バカ言わないで、
といった感じだ。ちなみにこれはThe Officeというアメリカのテレビシリーズの一場面らしい。“shabooya roll call”でYouTubeやGoogleを検索すればいろいろ出てくる。こういうのは説明するより見て(聞いて)もらった方が早い。
 上で自己紹介と書いたが、移動中の暇潰しにやることも多いし、学生のチアチームが母校の試合の応援が終わった後で、興奮冷めやらない状態でロールコールを始めるという話もブログ記事にあった。何かで盛り上がった時にノリでやることも多いようだ。
 これは元は黒人のチャントと呼ばれるもので、Shabooya自体に意味はない。日本の「ずいずいずっころばし」とか「おちゃらかほい」などと同じだと思えばいい。起源は分からないが、かなり古いもののようだ。これが世間に知られるようになったのはスパイク・リーの1996年度作品「ゲット・オン・ザ・バス」かららしい。バスの中で乗客たちがやっている場面がある。今では人種を問わず、アメリカでは誰でもやるようになった。
 チャントをウィキで調べると、一定のリズムと節の繰り返しで構成される文句のことで、元々は祈りを捧げる様式を意味する古フランス語に由来する。例えばグレゴリオ聖歌もチャントと呼ばれる。英語ではズバリGregorian Chantだ。他には日本の祝詞とか仏教の読経、題目もチャントの一種と考えられている。それと面白いのは、サッカー界ではチームや個人の応援歌のことをチャントと呼ぶ。どう聞いても完全に歌なのだが、なぜかチャントで通っているのが不思議だ。
 もうひとつ見逃せないのがモンキーチャントだ。これも特にサッカー界で多いのだが、白人国のチームにいる黒人選手に対して、猿の声を真似して侮蔑する行為だ。同時に猿の仕草を真似たり、猿が好きな食べ物として知られているバナナやピーナツを投げ込む場合もあるらしい。これは残念なチャントの例と言わざるを得ない。

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