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翻訳の現場から


2025.09.25

風間先生の翻訳コラム

コラム第129回:非殺傷性個人携帯兵器考

非殺傷性個人携帯兵器考

 以前「クリムゾン・タイド」という潜水艦映画を衛星映画劇場用で翻訳したことがあるのだが、セリフでcattle prodという言葉が出てきた。実物は出て来ない。直訳すれば牛突き棒となる。英辞郎では「牛追い棒」としかないが、ランダムハウスだと「牛追い棒、通例突くと電気ショックが加わる」とある。わけあって詳しく調べてみたのだが、牛追い棒とは牛や他の家畜を叩いたり突いたりして移動させる棒のこと。最初はただの棒だったが、1930年にテキサスで電気ショックを加える電気牛追い棒が発明された。だが似たような物は1910年代から売られていたらしい。だから現在では牛追い棒=電気牛追い棒と思っていい。他に「電気棒」という訳語もある。
 この電気棒だが、残念ながら動物以外に使われることがある。警察の治安活動や拷問で人間に向けられるのだ。警察が初めて利用したのは1960年代の公民権運動の時で、抗議デモの参加者に使われた。
 こうしてざっと知識を仕入れた後のこと。何気なく映画チャンネルで「ジュラシック・パーク」を観ていると、冒頭の方で檻の中にいる恐竜が隙を見てスタッフを食おうと引っ張り込む場面が出た。周りの人間は慌てて恐竜をおとなしくさせようと、先が電極のように二股になった長い棒を檻のすき間から突っ込んでいる。その時の効果音から判断して、明らかに電気ショックを与えている。これも電気棒だろう。本来の使い方と言っていい。原語で何と言っているか確認するとtaserと言っている。taserと言えば、例の警官や犯罪者が使う電気ショックを与える護身用具のはず。日本語だと「テーザー」ではなく「スタンガン」の方がよく聞くが…
 実はテーザーとスタンガンは別物だった。テーザー/taserは商標で、Taser International社が開発したテーザー銃のこと。固有名詞が一般名詞化したということ。これは電流コードの付いた矢を発射する銃のこと。電気銃とも言う。テーザーの威力を経験するために新人警官が撃たれる動画を見たことがあるが、巨体の男でも一撃で倒れてしまうくらい強力だ。表記についてはテーザー/テイザーと揺れがある。
 これに対してスタンガンはテレビのリモコンぐらいの大きさで、先端に電極が2つ出ている。これを相手の体に押しつけて電気ショックを与える。こちらの方が日本ではなじみがあるだろう。ちなみにスタンガンは防犯グッズとして日本でも購入できるが、テーザーは銃扱いなので日本では買えない。
 以上整理すると①ハンディタイプのスタンガン ②電気牛追い棒or警棒型の物 以上が近距離で相手に接触させるタイプ。そして③長距離でも使えるテーザーとなる。これ以外に④盾タイプも存在する。本来は動物制圧用だったが、暴徒鎮圧用にも使われている。盾の表面に電極がある。
 さて、今回の本題はここからだ。テーザーは長距離で使えるとはいえ、上述のように発射される矢(または針状の物)にコードが付いていて、銃本体とつながっている。僕はずっと疑問に思っていたのだが、撃った後はどうなるのだろう。相手から矢を抜いて元の銃に収めるのか?それとも矢だけ外して新しい矢を付け替えるのか?
 最近やった「ラブ・ハーツ」という作品でこの疑問が解消された。作品自体は配信のみとなってしまったがキー・ホイ・クァンの最新主演アクションだ。この中でヒロインのアリアナ・デボーズがテーザーを使うのだが、撃ち終わると銃の先端部分を外して捨てていた。つまり矢とコード部分はカートリッジになっていて、撃ち終わるとカートリッジごと取り換えるのだ。カートリッジを付けないと、スタンガンとしても使える。なるほど、そういう仕組みだったのか。

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