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翻訳の現場から


2017.06.06

風間先生の翻訳コラム

コラム第30回:水分補給はこまめに

水分補給はこまめに

段々と暑い日が増えてきた。熱中症にならないよう飲み物で水分補給に留意しよう。飲み物といえば古い作品だが、1991年公開の「ケープ・フィアー」という映画で、劇中の探偵がものすごい物を愛飲している。常にバーボンを正体不明の液体で割って飲んでいるのだが、その液体が原色のピンク色なのだ。僕は映画館で見たのだが、最初にピンクの液体のボトルが映ると、隣にいた外国人が爆笑した。こちらは不気味な物で割っているなとは思うが、なぜお隣さんが笑うのかが分からない。後でネイティブに訊いたところ、その液体は下痢止めなのだと教えてくれた。

今回、改めて確認したが、例の下痢止めはPepto-Bismol/ペプトビズモルという――ペプトビスモルという表記も見かけるが、発音はビズモルと濁るのが正しいようだ。下痢止めと書いたが、アメリカでは胸焼けから消化不良、腹痛、下痢まで胃腸関係の万能薬として一家に一本という薬らしい(日本だと正露丸というところかな)。だから、派手なピンク色と名前をちらっと見ただけで、お隣さんはすぐペプトビズモルだと分かったわけですね。

実際のペプトビズモルの食感はバリウムのそれで、フルーツ味と謳っているがドロっとしたチューインガムのようだとか。薬臭い、湿布臭いと書いている人もいた。あの甘すぎるのが気持ち悪いという意見も。バーボンと混ぜても分離しそうだ。映画ではシロップのようにグラスに注いでいたから、そこはフィクションなのかもしれない。

とんでもない物で酒を割る奴と言いたいのか、二日酔いになる前に胃腸薬で酒を飲む用意周到な男と言いたいのか、演出の意図は分からないが、とにかくいまだに忘れられない飲み物である。

派手な色の飲み物といえば、最近大リーグ中継を見ていると、ベンチやブルペンで選手がピンクやオレンジのペットボトル飲料を飲んでいるのを目にする。あれは何だろうとずっと思っていたのだが、先日翻訳した某作品で謎が解けた。劇中では二日酔いの男にPedialyteを飲めと勧める。何なのかと調べてみると、ペディアライトというスポーツ飲料だと分かった。本来は乳幼児の下痢や嘔吐、発熱の際の水分補給に使われる。スポーツ飲料というより経口補水液が正しいようだ。そして、その色がオレンジやピンク、紫といった派手な色をしているのだ!

スポーツライターの谷口輝世子さんという方が書いていた記事によれば、ペディアライトは他のスポーツ飲料に比べて糖分が少なく、逆に電解質が多いのでアスリートに好まれているらしい。そして、彼らがペディアライトを飲んでいるのがあまり知られていないのは、NFL、メジャーリーグなどがゲータレードと巨額のスポンサー契約を結んでいるからではないかと推測していた。

そうか。ペプトビズモルもペディアライトも、子供に飲ませやすいように派手な着色をしているんじゃなかろうか。「ほら、きれいな色でしょ。これを飲んで元気になろうね」などと言えるようにカラフルにしているという説はどうだろう。ならば正露丸もピンク色にして… いや、勘弁してください!

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