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翻訳の現場から


2021.07.16

風間先生の翻訳コラム

コラム第79回:ようこそ冒険クルーズへ

ようこそ冒険クルーズへ

サンプル

「ジャングル・クルーズ」
7月29日(木)映画館 & 7月30日(金)ディズニープラス プレミア アクセス公開
※プレミア アクセスは追加支払いが必要です。
© 2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 ディズニーランドの名物アトラクションから生まれた映画「ジャングル・クルーズ」が、コロナによる数度の延期を経てようやく公開される。ドウェイン・ジョンソン扮するクルーズ船の船長フランクとエミリー・ブラント演じる博士のリリーが船でアマゾンの川をさかのぼる冒険物語だ。男女の凸凹コンビが船で川を行くと聞いたら、往年の映画ファンはハンフリー・ボガートとキャサリン・ヘップバーン主演の「アフリカの女王」を想起するだろう。実際、気の強いオールドミスの宣教師と粗野な自由人の船長という「アフリカの女王」の主人公2人のキャラは、本作に影響を与えていると見ていい。さらに舞台となる時代や敵の設定にも類似点が見られるのが面白い。類似点は両作品の船長の服装にも見られる。ネットの時代になり、このような映画考古学は簡単に裏が取れるようになった。興味のある方はご自分で調べてみてください!
 また、ディズニーランドで同名アトラクションを楽しんだ方なら、本作のある場面を見てニヤリとするはずだ。このアトラクションの売りが船長役の軽妙なトークであるということを踏まえて本作をご覧になると楽しめると思う。これ以上は楽しみを奪うことになるので書きませんが、有名な迷所“世界の○○○○”も見られます!
 アトラクションをヒントに映画化されたものといえば“カリブの海賊”から生まれた「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズが有名だ(もちろんお分かりでしょうが“カリブの海賊”の英語読みが「パイレーツ・オブ~」ですね)。しかし本作の元となったジャングル・クルーズはカリブの海賊よりも古い。本家ディズニーランドがアナハイムでオープンした1955年からアドベンチャーランドに存在していた、由緒正しいアトラクションなのだ。
それにインスパイアされて作られた作品だけあって、本作ではアトラクションに関連する小ネタが多い(以下、簡単に本編の内容に触れるので、一切のネタバレが嫌な方は鑑賞後にどうぞ)。例えば上で船長のトークについて触れたが、アトラクションの船長はスキッパーと呼ばれる。映画の方のフランク船長も当然スキッパーだ。
冒険のテーマである<不老不死の花>発見の鍵を握るアイテムがあるのだが、映画ではかつてこれを発見したのが“フォールズ探検隊”という設定になっている。字数がないのでこのように訳したが、原文は“アルバート・フォールズ博士の探検隊”だ。このアルバート・フォールズ博士というのは、実はアトラクションの方にも関わるキャラだ。アトラクション版のクルーズを運営する“ジャングル・ナビゲーション・カンパニー”を設立したのが、このアルバート・フォールズ博士なのだ。彼自身が探検家であり、他の探検家、冒険家の荷物運送を助ける目的で設立されたのがこの会社という設定らしい。
また、アトラクション版に登場する有名な現地人のキャラがいるのだが、同じ名前で映画版にも登場する。詳しくは書かないが、アトラクションだとクルーズの最後の方に登場する人物だ。昨今のPCの動きで、現地アメリカ版ではリニューアルに伴って登場がカットされたという話も聞く。東京ディズニーランドでもリニューアルの話があるらしいので、今後はどうなるのだろうか…
 最後に豆知識を。映画ラスト近くで、ヨアヒムたちがドイツ語で歌う歌がある。これはGebrüder Wolfの"Dat Paddelboot"という曲。日本語に訳すとウルフ・ブラザーズの“あの外輪船”となる。ウルフ・ブラザーズというのは19世紀末から20世紀初頭にハンブルクで人気があった歌手グループだ。つまり、あの歌も船絡みというわけデス。

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