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翻訳の現場から


2025.08.19

風間先生の翻訳コラム

コラム第128回:戦争!何のためになる?

戦争!何のためになる?

 8月は終戦記念日。今回は戦争をきっかけに広まったものをランダムに見ていこうと思う。
 戦場と言えば鉄条網である。普通はトゲのある有刺鉄線を指す。僕が子供の頃はバラ線と言っていた(花のバラですね)。だが元々は簡易の柵として19世紀に発明されたものだ。特にアメリカでは牧場用の柵として利用された。広大な牧場を木や石の柵で囲むのは非常なコストがかかるため、安価な鉄条網が喜ばれた。初めて軍事転用されたのは南北戦争やボーア戦争辺りだが、大々的に利用されたのは第一次大戦である。機関銃の登場でそれまでの突撃戦法が使えなくなったため、戦場は塹壕戦となった。この塹壕の防御として鉄条網が使用されたのだ。塹壕+鉄条網という防御は非常に固かったため、打開として戦車が発明されたのはよく知られている。
 身近なところでは缶詰もそうだ。戦場での食料補給に悩まされていたナポレオンが発明させたと覚えている人も多いと思うが、ナポレオンが出した懸賞に応えて発明されたのは瓶詰め。1804年のことだ。しかしガラス瓶だったため、重くて破損しやすかった。これを改善するために1810年にイギリス人のデュランドがブリキ缶を使った缶詰を発明する。しかし当初は缶の密封に使ったはんだに鉛が多量に含まれており、鉛中毒で死亡する事例があった。それと殺菌に問題があり、中身が発酵して缶が爆発するという事故が多発したそうだ。
 身近な物で意外だったのが腕時計だ。大型の機械時計(置き時計や掛け時計などで、英語でclockとなる)の発明は11世紀頃までさかのぼれるが、身に着ける小型の時計(英語はwatch)が発明されたのは16世紀。一般的になるのは19世紀だが、主流は懐中時計(pocket watch)だった。腕時計(wristwatch)も懐中時計と同時期に開発されたが、当時は女性用と考えられていた。男性は専ら懐中時計を使っていたのだ。この腕時計の普及にも戦争が関わっている。男性が腕時計を使ったのは19世紀末の軍人だった。戦術として同じ時刻に攻撃を仕掛けるために、士官が腕時計をするようになったのだ。さらに大衆に広がるきっかけとなったのが、やはり第一次大戦なのだ。第一次大戦は塹壕戦である。塹壕を掘って隠れ、突破されないよう鉄条網で守りを固める。これを打開するために編み出されたのが移動弾幕射撃という戦法だ。簡単に言えば、大砲で敵陣の特定地域に連続射撃を行う。これを弾幕と言う。この弾幕を徐々に敵陣に近づけ、弾幕の間に歩兵を進ませるのだ。だから砲手の撃つタイミングと歩兵前進が正確に合わなければいけない。そこで参加する兵士に腕時計が渡され、終戦近くにはほぼ全兵士に腕時計が支給された。塹壕戦のタフな環境で使用されるため、既に強化ガラスや文字盤に蛍光塗料が用いられていた。そして終戦後、新たなファッションとして腕時計が流行し、一般人の使用も増え、1930年頃には懐中時計を大きく上回るようになり、今に至っている。
 サマータイムの普及に一役買ったのも戦争だ。サマータイムを初めて提唱したのはベンジャミン・フランクリンだと言われている。ロウソクを節約するために、起床時間を太陽に合わせるよう提唱した。これが全国規模で実施されたのがドイツ帝国とオーストリア=ハンガリー帝国だ。第一次大戦で石炭の消費量を減らすために1916年に導入され、その後ヨーロッパでは中立国も含めて多くの国が採用、アメリカも1918年に採用する。終戦後は一部の国を除いて廃止されたが、第二次大戦で再び採用され、その後一般化した国が多い。

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