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翻訳の現場から


2023.06.10

風間先生の翻訳コラム

コラム第102回:探偵ゲーム

探偵ゲーム

 昔やった作品の話。登場人物がある事件を調べている。容疑者が複数いるので一覧表を作り、動機はあるか、犯行が可能かなどをチェックしている。それを見ていた相手がこう言う――「Clue notepadみたいだ」。初見では何のことか分からないので早速……
 まず、そのまま“clue notepad”で検索すると、画像検索結果に表のようなものがたくさん上がってきた。どれも商品の映像だ。試しのその1つを見てみると、大きな項目として「Who?/誰?」「What?/何?」「Where?/どこ?」とあり、「誰?」の下には名前らしきもの、「何?」には様々な物の名前が並んでいるが、短刀、銃など物騒な物がある。「どこ?」に並ぶのは食堂、書斎など部屋の名前のようだ。それぞれの名前の横にはマス目がたくさん並んでいる。上述の映画の登場人物の一覧表と似ている。
 画像結果の2つめも似た表だが、大項目が「Suspects/容疑者」「Weapons/武器」「Rooms/部屋」に変わっている。つまり「容疑者」は「誰?」、「武器」は「何?」、「部屋」は「どこ?」ということ、まさしく事件の捜査ではないか。ということはweaponsとはdeadly weapons=凶器のことなのだろう。
 さらに2つの画像はどちらも通販のアマゾンのページに飛ぶ。よく標題を見ると、1つめはClue Board Game Sheets、2つめはClue Detective Notebook Sheetsとあるではないか。ボードゲーム、それも探偵物のゲームに使う商品のようだ。ここまでヒントがそろえばあとは簡単だ。Clueという名前のボードゲームを調べればいい。
 想像どおりClueとは探偵物のボードゲームの名前だった。オリジナルは1949年にイギリスで発売されたCluedo/クルードというゲーム。同じ物が北米ではClue/クルーとして発売されている。大富豪の屋敷で主が殺される。犯人は誰か、凶器は何か、犯行現場はどこかを推理するというゲームだ。容疑者は6人、凶器は6つ、犯行現場は9部屋あり、この中から正しいものを言い当てたら勝ち。詳しいルールを説明すると長くなるので省略するが、ゲームが進むに連れて容疑者、凶器、現場に関する情報が少しずつ分かるようになっている。それをプレーヤーが整理できるように「探偵メモ」というのが配られる。このメモが冒頭のclue notepadなのだ。例えば凶器は短刀ではないという情報が公開されたら、各プレーヤーは自分のメモの短刀のマスに×をつける。こうして不要な情報を削除していくことで真実を推理していくのだ。
つまりclue notepadとは「ゲームの“クルー”用メモ」ということだ。なぜこんなものが商品として販売されているかというと、ゲームにはこの探偵メモが1セット梱包されているわけだが、メモはプレーヤーがゲーム毎に書き込む。つまり使い捨てだ。だから何度もゲームをやっているとなくなってしまう。そこで別売りで探偵メモが用意されているのだ。
欧米ではクルード/クルーは非常に人気のあるゲームで、対象年齢は8歳から。論理的思考、演繹法を学ぶのにもいいということらしい。スマホゲームにもなっていて、大人も(懐かしさを含めて)楽しんでいるようだ。だから「クルーのメモみたい」というセリフが出てくるのだ。
日本版もタカラトミーから出ていた(今は絶版?)。面白いのはオリジナルの設定が殺人事件だったのに、失踪事件に変えられていることだ。子供向けの配慮ということだろうか。また、人気ゲーム故にコラボ版もある。ドラマ「シャーロック」とコラボしたシャーロック・エディションが海外で出ているし、これも絶版らしいが「名探偵コナン 消えた財宝の秘密」というバージョン(こちらはクルーの翻案版)もある。
さらには映画化までされている。1985年に“Clue”のタイトルで公開され、「殺人ゲームへの招待」という邦題で日本公開もされた。すごいのは3種類の結末が用意され、劇場によって結末が違ったらしい。DVD化に当たって3種の結末すべてが収録されたらしいが、こちらも現在は絶版のようだ。
ちなみにゲームの日本版から「クルード」という表記で知られているが、本来の発音は「クルードー」が近い。発音サイトで確認すれば分かります!

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