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翻訳の現場から


2016.07.04

風間先生の翻訳コラム

コラム第19回:フォーメーションは3-2-3

フォーメーションは3-2-3

「ペレ 伝説の誕生」
配給:アスミック・エース
(C)2015 Dico Filme LLC




「ペレ 伝説の誕生」と来れば言わずもがな、あのペレの映画である。世の中にレジェンドと呼ばれる人間は数多くあれど、真のレジェンドの一人と言えるペレの若き日を描いた知られざる真実の物語だ。

さてこの作品、関係者用の試写が終わり、最後の字幕チェックをしていた時のこと。オペレーターが「ちょっと気になったのですが」と言う。オペレーターというのは字幕の出るタイミングや場所を調整する人のこと。つまり技術的なことを担当し、翻訳そのものにはタッチしない。だが、この時のオペレーターはサッカーファンだったのだ。

コーチが選手にフォーメーションの話をしている。その中で「よく覚えておけよ 敵が3-2-3で来たら――」というセリフが気になると言う。普通は足して10になるはずなんですがとの指摘だ。フォーメーションとは選手の配置、布陣のこと。通常はGKを除いた10人の配置を指すから足して10にならなければならないのだ。

実は、これ以前にセリフでフォーメーションが出てきた時は、自分でも足して10になるか確認していた。数字のケアレスミスというのは結構あるので、スクリプトと数字が合っているかも含めて見直していたのだ。ただ、指摘があったセリフは足し算を怠っていた。3-2-3だと足して8。あと2人の配置が欠けている。慌ててスクリプトを確認してみると3-2-3と書いてある。僕はスクリプトどおりに訳していたのだ。

オペレーターにその旨を伝えると、前または後ろ2人を除いたフォーメーションという可能性もなくはないと言う。例えばその2人は不動で、残り8人をどう配置するかという話というのもあり得るとのこと。だが、やはり不自然さは否めない。そこで音声を確認することになった。改めて当該箇所のセリフを聞くと、何と2-3-2-3と言っている。これなら足して10で何の問題もない。つまりスクリプトの間違いだったのだ。

この作品はペレの物語だが、セリフは基本的にすべて英語だ。ただし、舞台がブラジルということで、わざとブラジル訛りの英語を話している。それでヒアリングが難しかったのだろうか、スクリプトには間違いが多かった。当然このセリフも眉唾できちんと音声を確認すべきだったのだ。それにしても、やはりファンというのは鋭いし、怖い。今回はそのファンがいわば身内だったからよかったものの、公開後だったら「あの訳は変では?」と突っ込まれていたところだ。改めてYさん、ありがとうございます。

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