TEL
03-5544-8512

休校日:日曜・月曜・祝日


資料請求
お問い合わせ

MENU

翻訳の現場から


2017.03.03

風間先生の翻訳コラム

コラム第27回:出典を明記してください

出典を明記してください

c Twentieth Century Fox and Ubisoft Motiona Pictures. All Rights Reserved.
3月3日(金)TOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー



間もなく公開される「アサシン クリード」は人気ゲームを映画化した作品だ。先頃完結した「バイオハザード」や「トゥームレイダー」などゲームを原作とする映画はいくつかある。世界観なりキャラクターが確立していると映画化の食指が動くのだろう。本作では現在とルネサンス期のスペインを舞台に物語が展開していく。

さて、本作ではセリフの中で2種類の名言が引用されている。一つは発言者が誰かを言うが、もう一つは説明がない。「我は死神なり。世界の破壊者なり」という文句だ。これは原爆の父と言われるオッペンハイマーの言葉だ。この文句自体が古代インドの聖典「バガヴァッド・ギーター」からの引用だ。彼は世界初の核爆弾実験を目の当たりにして、その破壊力のすさまじさにこの言葉が頭の中に浮かんだと語っている。そこから、圧倒的な破壊力や武器を持った人間や、それを前にした人間が引用することが多い。それを踏まえれば、本作では相手を非難する意味で使われていることが分かるはずだ。

引用で一番多いのは何と言ってもシェイクスピアと聖書だろう。映画に限らず引用が多いので、ネット上では専用の検索エンジンがいくつもある。それと実は映画のセリフも引用または言及されることが多い。「カサブランカ」「風と共に去りぬ」「ターミネーター」「ダーティハリー」など、映画の中から有名になった言葉は多い。代表的な映画サイトのIMDBではズバリQuote:引用という項目があり、作品中の名セリフ、人気のあるセリフを紹介している。  だが、偉人の言葉でも映画のセリフでも、引用だと見当がつけば出典を探す手段は何とでもなる。問題は引用と気づかない場合だ。困るのは、その文句が引用を超えて有名になり、親しまれ、慣用句のレベルにまで浸透した言葉だろう。場合によっては話者が引用と強く意識していないだろうこともある。

例えば探検家のリヴィングストン博士が行方不明になり、後に捜索隊が別人のように痩せ細った博士を発見した時に"Dr. Livingstone, I presume?"と言った。「もしやリヴィングストン博士でいらっしゃいますか?」――これはエピソードとともに有名なセリフとなり、現在では久しぶりに会った知人に"Dr. Livingstone"の部分を相手の名前に変え「〇〇さんじゃないですか?」などと冗談半分で言ったりする。

有名な4人組のグループから1人が脱退して3人になると、新聞の見出しにAnd then there were threeと書かれることがある――「そして3人が残った」。これはマザーグースの"テン・リトル・インディアンズ"を踏まえている。10人のインディアンが事故で1人ずつ死んでいくという内容の怖い民謡だが、1人死ぬたびにand then there were 〇〇と残った人数の数字が入るのだ。ちなみに最後はand then there were none――「そして誰もいなくなった」となる。そう、クリスティの有名な小説ですね。

引用されるからには、その文句が有名だったり常識として了解されているという前提があるわけだ。つまりはその背景や歴史、文化を知らねば理解できない、または真の意味が伝わらないということになる。翻訳とは英語の理解だけでなく、文化を理解することだろう。そこが難しく、面白い所なのです。だから勉強、勉強!

アーカイブ

ランキング

最新記事

一覧に戻る

資料請求・お問い合わせ CONTACT

当サイトをご覧いただきありがとうございます。当校の映像翻訳講座に関するお問い合わせ、資料のご請求は下記のメールフォームより受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

資料請求・お問い合わせ

資料請求
お問い合わせ