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翻訳の現場から


2018.04.03

風間先生の翻訳コラム

コラム第40回:スパイの国イギリス

スパイの国イギリス

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発売・販売元:株式会社ハピネット



 昨年公開された「アトミック・ブロンド」は、主演のシャーリーズ・セロンの激しいアクションが話題になった。また、スパイ映画ということで、真の裏切り者は誰かというミステリーも楽しめる作品となっている。時代設定はベルリンの壁崩壊直前の1989年。バックで80年代当時のヒット曲がいくつも流れる。サントラもなかなか興味深いので、ぜひ楽しんでいただきたい。
 さて、今回は作品中で出てきた面白い表現をいくつか取り上げてみよう。まずは“made”。言うまでもなくmakeの過去形なのだが、潜入捜査官やスパイに対して使って「正体がばれる」という意味になることがある。これは俗語を載せているUrban Dictionaryというサイトにも説明が載っている。本編ではFive minutes on the ground and I’m already made/着いて5分でもう正体がばれた、というセリフで使われていた。
 次は言い回しが面白い表現。相手の臭い芝居にウンザリする主人公が次のように言う。I trust you about as far as I can throw you. 直訳すると「あなたを投げられる分だけ、あなたを信用する」となる。体重が相当ある人間を投げるというのは至難の業ですよね。つまり投げられる距離はほとんどないということになる。「ほとんどない距離の分だけあなたを信用する→あなたのことはまったく信用できない」という意味になるわけです。trust~as far as I can throw~で「~をまったく信用できない」というイディオムなのだ。
 最後は僕の勝手な思い込みかもしれないが、要人を脱出させようとする直前に主人公がこう言う―― You're no good to me dead/あなたが死なれたら(私が)困るの。僕は文法がそれほど得意なわけではないが、英文としてはブロークンな感じ、いかにも口語表現という感じがする。文章の最後にdeadと付け加わるのが気になるのだ。だが言いたいことは何となく通じる。
 さて、問題はこの表現に元ネタがあるのではないかということだ。それは「スター・ウォーズ」ep.5の「帝国の逆襲」だ。この中に出てくる賞金稼ぎボバ・フェット(甲冑を着たようなインパクトのあるビジュアルで知られる)が、ハン・ソロを拷問したベイダーに文句をつけるセリフ――He’s no good to me dead/(ソロが)死体では困る、というのがオリジナルのようなのだ。
 「スター・ウォーズ」の多くのセリフは、名言としてファンの間で投票が行われたりしている。「フォースが共にあらんこと」はあまりにも有名だが、それ以外にも人が堕落したり悪に染まった時に「ダークサイドに落ちた」と言うなど、普通の言い回しとなったセリフもある。
 今回のボバというのはファンの間で人気のキャラなようで、このセリフもかなり有名らしい。ep.5の公開は1980年。「アトミック~」の舞台が1989年だから、主人公がこのセリフを知っていたということは設定としてあり得る。no good to me dead というのが普通の言い回しとなっているのかは分からないが、「スター・ウォーズ」のセリフを踏まえて主人公が言ったかもしれない、と想像をしてみるのも面白い。映画ファンにだけ許される楽しい妄想ではないだろうか。

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