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翻訳の現場から


2024.04.11

風間先生の翻訳コラム

コラム第112回:インド系アメリカ人

インド系アメリカ人

 先日、朝日新聞で、アメリカでインド系の存在感が増しているという記事を読んだ。トランプと最後まで共和党大統領候補を争った元国連大使のニッキー・ヘイリーや、早々と撤退したものの、同じく共和党候補として立候補した実業家のビベック・ラマスワミは共に両親がインド系である。民主党に目を向けると、現副大統領のカマラ・ハリスは就任時、アフリカ系アメリカ人として初の副大統領と盛んに言われた。確かに父親はアフリカ系だが、母親はインド系である。インド系初の副大統領という言い方もできる。そういえばイギリスの現首相リシ・スナクもインド系だ。こちらもイギリス初のインド系首相である。
 アメリカでのインド系の進出を華僑になぞらえて「印僑」と言うのだそうだ。進出と書いたが、記事では「ディアスポラ」という言葉を使っていた。民族離散と訳されることが多く、僕はユダヤ人やアルメニア人など、弾圧でやむをえず故郷を離れた人々のことだと思っていた。だが近年は華僑や印僑もディアスポラと言うらしい。ただ、華僑や印僑は故郷の貧しい生活から抜け出すため、自発的にアメリカ等に移住するケースが多いはずだ。それをしてディアスポラと言うのは個人的に違和感を覚える。
 アメリカにおけるインド系の進出は、政界よりも経済界が目立つ。特にIT業界で働く外国人の4割がインド系だそうだ。それとインド系の強みとして、英語を話せる人が多いということが挙げられる。イギリスの植民地だった経緯だろう、英語が準公用語なのだ。
 それで思い出したが、アメリカ――確かニュージャージー州だと記憶するが、役所だか会社のアウトソーシングの一環として、電話の苦情対応を丸ごとインドの会社に委託したという話を聞いたことがある。電話は転送することで、米国時間に合わせる必要はあるものの、インド国内でも対応が可能だ。アメリカと比べてインドの給料は安いから費用を抑えられる。英語を話せる国民が多いからこそ可能な仕事だ。インド人には比較的高給な仕事だったので応募者は多かったらしいが、外国人と話していると州民に悟られないよう、完璧なアメリカ英語を話せるのが条件だったそうである。発音はもちろんだが、インド英語というのは文法にも癖がある。興味がある方は「インド英語」で調べてください。
 もうひとつ、インド系と言えばアメリカでは医者というのが定番である。アメリカでは〇〇系はどの職業というステレオタイプがある。時代によって変化はあるのだが、昔なら日系は庭師、アイルランド系は警官といった具合だ。実際、大きい病院なら必ずインド系の医師がいるという。ネットでは、アメリカの医者の40%はインド系という記述もあった。個人ブログなので裏は取れないが、多いのは間違いないようだ。
 そういえば、以前翻訳したアクション映画で、罠にはまった主人公が病院に逃げ込む。情報を得るために院内のパソコンを使おうとして、院内放送で呼び出される医者の名前を使ってアクセスしようとするのだが、最初に耳にするのが「ナハバラータ先生、お電話です」という放送。主人公は“ナハバラータ”という名前のスペルが分からず、毒づくという場面があった。ナハバラータというのは明らかにインド系の名前だ。医者にインド系が多いと知っていると、より納得できる場面である。

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