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翻訳の現場から


2024.09.10

風間先生の翻訳コラム

コラム第117回:カマラは悪ガキ?

カマラは悪ガキ?

 アメリカの大統領選が近い。全米一番のイベントだから、いろいろ新しい言葉やフレーズなどが登場する。オバマの“Yes we can”やトランプのMAGA/Make America great againなどは有名になった。拙コラムでも第87回で民主党のサンダース議員のソーシャリストの話を書いた。今回の大統領選でも興味深い話がちらほら出てきている。

 大統領選というと、日本では今まで知名度のなかった議員が候補者として現れ、表記が揺れたり、今までの表記が変わる例がある。近年だと2020年の民主党予備選挙で登場したピート・ブティジェッジ/Pete Buttigiegがそうだ。彼の父はマルタ移民で、「ブティジェッジ」はマルタ語のルーツであるアラビア語由来の姓だとか。アメリカ人も読み方に悩むらしく、日本でも「ブティジェッジ」に決まるまでかなり表記が揺れていた。
 そして今年の民主党副大統領候補のティム・ウォルズ/Tim Walzである。朝日新聞では2024年8月14日、表記をティム・ワルツからティム・ウォルズに変更するという「おことわり」が載った。この時点でウィキを見ると「ティム・ウォルツ」でページ立てしており、「ウォルズ」への改名が提案されている旨の注釈が載っていた。9月現在では「ティム・ウォルズ」に変更されている。確かにスペルだけ見たら音楽のワルツ/waltzのtがないだけだから、ワルツ、ウォルツと書きたくなるのはよく分かる。

 一方の共和党副大統領候補、J・D・バンスの発言で有名になったのが「キャット・レディー/cat lady」だ。バンスが副大統領候補に選ばれると、過去にFOXテレビのインタビューに応じた際の発言が注目を浴びることになる。彼はカマラ・ハリスら出産経験のない女性を「子供のいない惨めな人生を送るキャット・レディー」と中傷したことが明らかになり、この動画がSNSで拡散され、非難が殺到したのだ。
 cat ladyというのは「猫好きな女性、猫をたくさん飼っている女性」という意味だが、猫を飼う=独身女性を指す場合が多い。また、人より猫との付き合いを好む変人といった否定的なイメージを伴う。このフレーズは英辞郎にも載っているが、文字どおり猫好きだろうとすぐ了解されるだけに、それに伴うマイナスのイメージをスルーしてしまいそうだ。

 そのカマラ・ハリス副大統領/民主党大統領候補についても注目すべき文句が登場した。それがKamala IS bratである。彼女が民主党の大統領候補になるや、イギリスのミュージシャン、チャーリーxcx(彼女もハリスと同じインド系)がSNSでKamala IS bratと投稿した。このbratが曲者なのだ。
1980年代にアメリカの青春映画に出演したトム・クルーズやエミリオ・エステベスら若手俳優が「ブラット・パック」と呼ばれたが、bratとは悪ガキ、小僧っ子といった意味だ。では「カマラは悪ガキ」という否定の投稿かと思いきや、これが違うのだ。今の10代、20代は「ちょっとバカなこともするけれど自分に正直で信念のある人間」というポジティブな意味で使っている。badがいい意味になったような、いわゆる意味の逆転だと思えばいい。
 このbratの新しい意味はネイティブでも若者以外は知らないらしく、今回の投稿をきっかけに一般にも広がった。さらに投稿ではISが大文字になっている。これは「カマラこそがbratだ」という強調の意味なのだそうだ。いろいろ勉強になります!

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